多くのラグビーファンの方と同様だと思うのですが、立川理道がいつか日本代表の柱になると思ったのは大学選手権決勝で立川率いる天理と絶賛連覇中の帝京が戦った試合でした。

天理のそれまでの試合も見ていましたが、あの時からかなり強かった帝京との試合で「これは…!」と思った方が多いんじゃないでしょうか。

そして思ってたより早く、思っていた形とは違うプレースタイルで日本代表の中心になりました。
大学時代はスタンドオフで、タイミングから角度からスピードまで完璧のパスを投げてて、視野が広く自分でも仕掛けられる選手というイメージが強かったので、今のようなクラッシュマンになるとは想像もしていませんでした。

トップスピードでボールをもらって当たる選手に狙いを定め、当たる寸前に一気に低い姿勢になり、倒れた後は1cmでも前にゲインラインを持って行くべく匍匐前進のように体を前に持っていき、腕を伸ばしてボールを味方側に送る。
立川理道が真に覚醒したワールドカップ以降何度も見るシーンですが、この一連のプレーが大好きで、この献身的な働きっぷりに心奪われファンになった方も多いでしょう。

そんなファン待望の自伝本が出ました。

村上 晃一
天理教道友社 2016-10-01
¥ 1,512

著者は立川選手に学生時代からインタビューし続けているラグビージャーナリスト村上晃一さん。
幼少期から今に至るまで立川理道に関わった様々な人に話を聞きつつ、今の立川理道を形成するものを抉り出す一冊です。

「みどりのテープ」などファンにはおなじみのエピソードから、天理ラグビーにまつわるディープな話まで盛りだくさんで、これを読むともう立川理道本人になった気になれます。

出版社が天理教道友社ということもあり、天理の教えとラグビーという部分に重きが置かれていて興味深かったです。
立川理道を語る上で天理ラグビーは欠かせないファクターであり、スキル面でも精神面でもいかに現在の立川理道が影響を受けているかが伺えます。

中学時代の指導者の話も面白いです。

短いパス、長いパス、ダウンボール、これは徹底的に教え込みました。
理道の今のダウンボールは中学のころのままですよ。
自ら持ち込んだボールは必ず味方に出すでしょう。
それから左右のパスと左右のキックはしっかり練習しておかないと、将来、日本代表になったときに困るで、と話していましたね。

当たり前のことを徹底的に教えるというのは簡単ではないと思いますが、現在でも世界レベルでその基本が出来ているんだから恐ろしい手腕の指導者だと思います。

将来は長いパスも必要だと思って、スクリューパスも教えました。OBからは、中学生にスクリューパスなんて教えたらあかん、と言われましたが、長いパスもどんどん放らせました

たぶん一般的には中学生で云々というのも正しいのでしょうが、将来を見込んだ選手の将来まで見越した指導は素晴らしいですね。
南アフリカ戦の立川からマフィへのロングパスもなかったかもしれません。

立川理道が試合後にレフリーに握手しにいく姿の印象が強い人も多いと思います。
個人的には前述の帝京戦、最後の最後にペナルティキックで勝ち越されるという試合でレフリーに握手を求めた彼の姿がすごい印象的です。

そのことについて立川理道のコメント。

レフリーに最初にいくのは、直道がキャプテンのとき、そうしてるのを見習ったものです。
兄(誠道)がレフリーをしているのも影響しているかもしれません。
レフリーに文句を言うのはチームのためになりません。

そういえばウェールズに勝った試合、自らボール外に持ち出した後もすぐにレフリーに挨拶にいってましたね。
勝ったら仲間と喜びたいし負けたら落ち込む、その前に相手チームでもなく仲間でもなくレフリーにリスペクトを払うというのは素晴らしいです。本当にリスペクトがあるから一貫して続いてる行為なのでしょうね。

でもまあなんといっても南アフリカ戦の話が面白いです。
大会後に色々インタビュー出ましたがまとまっててよいです。
ブランビーズで結果が出ず、その後も決して調子がいいというわけではなかったのに何故覚醒できたのか。

本当はポスを使って、どんどんボールを動かしたかった。でも、僕はクレイグ・ウイングの代役。ゲームプランを変えることはできない。

おそらくこの割り切りがクラッシュマンとして開眼するきっかけだったのでしょうが、ゾーンに入ったとかスローモーションに見えたとか漫画の主人公が能力発揮する時みたいなことも言ってて面白かったです。

ワールドカップ後に出たインタビューで言ってた内容と重なる部分もありましたが、この本の流れで読むと全てが繋がってる感があってまたさらに胸が熱くなります。
国歌の時に涙流した理由とかマジ熱いんで是非読んでください。
あと網膜剥離の件とかやばすぎて怖いです。

ラグビー用語はノックオンにまで注釈がついてるんで、ラグビーはまだよーわからんけど立川理道は超好きみたいな人も大丈夫です。
学生ラガーは特に読むといいと思います。
プレーは見てたら参考にできる部分あるけど性根の部分を本で学ぶのもよいものです。

今年はサンウルブズ、日本代表キャプテンと立川理道は文字通り日本代表の柱になりました。
2019年、会場を沸かせる選手なのも間違いありません。
同時代に活躍し成長する姿をリアルタイムで見れるのがこんなに楽しい選手もなかなかいないんで、そういう選手を掘り下げる本を読めてよかったです。